耐震診断の概要と流れ
耐震診断の必要性
1981年6月の建築基準法改正により新しい耐震基準が制定され、この月以降に建築確認を受けた建物は新建築基準が適用されています。
新しい耐震基準が制定される前に竣工した建物は一般に「旧耐震基準」のマンションと呼ばれ、現在の建築基準法を満たしていないため「既存不適格」に該当します。決して違法建築物ではありませんが大地震に対する耐力に不安が残され安全を確認するための耐震診断が求められています。
旧法では中程度の地震 (M5~7)に対し、新法ではM8以上を想定震度として
います。
耐震診断及び耐震改修の促進
耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)は、阪神大震災の教訓から、1995年12月25日より施行されている法律で、「旧耐震基準」の建物では耐震指標Is値を求め、判定基準値0.6以下については耐震補強の必要性があると 判定されます。(以下に詳述)
既存の建物のうち、特に多数の人が利用する一定規模以上の建物を「特定建築物」とし、その所有者は”建築物が現行の耐震基準と同等以上の耐震性能を確保するよう耐震診断や改修に努めること(努力義務)”が求められています。
さらに建築物の耐震改修を行おうとする建築物の所有者は、耐震改修計画について認定を申請することにより、建築基準法の規定の部分的な緩和・特例措置や資金の貸し付け、税法上の特例などを受けることができます。
また地方自治体ではマンションに対しても耐震化を促進するために、調査や工事監理等の費用を助成する制度を設けています。
とくに主要道路や鉄道線路沿いのマンションには、震災時の救助や物資輸送を円滑に行うため、診断費用の全額補助を行う代わりに、期限を設定して実施努力義務を付けています。
耐震診断の基準
耐震診断の流れ
診断方法
既存建物の耐震診断を実施する上で、重要な要素のひとつが診断に要する時間と費用です。
診断が精密になるほど時間と費用は多くかかることになり、建物の特徴に見合った診断方法を選択することが肝要です。
当社ではまず予備調査(設計図書の内容確認により建築物が設計図書どおりかどうかを概観)を行い、診断内容(診断の必要性や診断レベル:一次診断/二次診断/三次診断)を判断します。
予備調査 |
設計図書の内容確認により建築物が設計図書どおりかどうかを概観し、診断内容(診断の必要性や診断レベル:1次診断/2次診断/3次診断)を判断します。 |
第1次診断 |
建物重量とそれをささえている各階の柱・壁の断面積等で推定する方法。設計図面が残っていれば建物の詳細な調査を行わなくても短時間で計算できる方法です。
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第2次診断 |
柱・壁のコンクリート強度と鉄筋の量から建物の強さと粘りを推定する方法。1次診断より結果の信頼性が高く、公共建築物(学校・庁舎等)で最も多用されている方法です。
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第3次診断 |
二次診断の柱・壁に梁・基礎を加えて建物の強さとねばりを推定する詳細な方法
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調査項目
- 目視によるコンクリート躯体の調査(ひび割れ、コールドジョイント、ジャンカ、漏水、エフロ、ハクリ、剥落、浮き、ふくれ、鉄筋露出、他)
- 鉄筋定着状況調査(はつり試験)
- レベル調査(不動沈下調査)
- 配筋状況・鉄筋かぶり厚調査(ハンディーサーチ)
- コンクリートコア採取より圧縮強度、中性化深度調査(材料調査)...等
耐震改修の実施
耐震診断によって「耐震改修が必要」と判断された場合は、続いて耐震改修設計、工事の実施と進むことになります。
マンションでは耐震工事は共用部分の変更に該当し総会での決議が必要となります。定足数は、形状の著しい変更を伴わない限り、組合員の過半数の賛成で可能となります。